2025年10月13日

矯正治療を考えている親御さんなら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。「マウスピースを使った矯正」や「目立たない矯正」は大人向けにもだいぶ普及していますが、インビザライン・ファーストは子ども(混合歯列期=乳歯と永久歯が混ざっている時期)向けに設計されたマウスピース矯正の選択肢です。
普通、子どもの矯正というとワイヤー矯正や拡大装置(顎を広げる機器)を使うケースが多いですが、インビザライン・ファーストは「透明なマウスピース」で、顎の成長も利用しながら歯並びを整えていこうという仕組みが特徴です。透明だから目立ちにくく、食事時には取り外せるため普段の暮らしの中でのストレスも抑えられます。
この方法がなぜ注目されているのか。子どもの時期だからこそできる介入、メリットと注意点を交えて、疑問を持つ方たちに向けて噛み砕いてお伝えします。
どの年齢・どんな歯列の子に向いているの?
インビザライン・ファーストが基本的にターゲットにしているのは、おおよそ6~10歳前後、乳歯と永久歯が混ざっている混合歯列期の子どもたちです。
この時期は、顎の骨がまだ柔らかく成長過程にあるため、顎を広げやすいという利点があります。インビザライン・ファーストでは、ただ歯を並べるだけでなく、顎を少しずつ広げて、これから生えてくる永久歯がきれいに入りやすい“スペース”を作ることを同時に目指せる設計になっています。
ただし、すべてのお子さまに適用できるわけではありません。たとえば、すでに顎が小さすぎて矯正だけでは対応が難しいケースや、骨格性のズレが大きい場合は別の矯正方法を検討する必要が出てきます。矯正医が精密な検査をしたうえで適応判断をします。
どう進める?治療の流れと期間について
まず、治療を始める前には歯科矯正専門医と相談し、3Dスキャンやレントゲンなどでお口の状態を詳しく調べます。それによって、インビザライン・ファーストが適しているかどうか、どのくらい顎を広げるか、歯をどのように動かすかなど、治療計画を立てます。
治療開始後は、透明なマウスピース(アライナー)を順に交換しながら少しずつ歯を動かしていきます。多くのクリニックでは、マウスピースを1〜2週間ごとに交換するスタイルを採っています。
目安となる治療期間は、おおよそ1年から1年半ほど。歯と顎の成長具合、マウスピースの装着時間を守れるかどうかなどによって変動します。
治療中は定期的に歯科医院を訪れ、経過をチェックし、新しいマウスピースがちゃんとフィットしているかを確認してもらいます。
メリット:なぜ選ばれているの?
まず、見た目が目立ちにくい点は大きな魅力です。透明なマウスピースなので、笑ったときや話しているときにも矯正していることを気づかれにくく、学校生活や友達関係でのストレスを軽くできます。
食事や歯磨きのときに取り外せるという点も、従来のワイヤー矯正に比べて大きな利点です。食べ物が矯正器具に挟まる心配が少なく、歯磨きがしやすいため虫歯リスクを抑えることができます。
また、顎の成長を利用できることから、将来的に抜歯を回避できる可能性が高まるケースがあります。早く適切な介入をすることで、永久歯がきれいに並ぶ土台を整えることが可能になるからです。
さらに、通常の矯正治療では顎を広げる装置とワイヤー装置を別々に使うステップがあることが多いのですが、インビザライン・ファーストは「顎の拡大」と「歯の動かし」を同時に進められる設計がなされている点も強みです。
痛みや違和感も比較的抑えられることが多く、金属を使わないため口の中を傷つけにくく、矯正中のトラブルも少ない傾向があります。
注意点・デメリット:気をつけたいこと
まず最も重要なのは、マウスピースの装着時間を守ることです。1日20時間前後(食事・ブラッシング時を除く時間)つけていないと、歯の移動が計画通り進まないことがあります。装着時間を守れないと、治療期間がずれる・計画が狂う可能性があります。
取り外し可能であるため、紛失や破損のリスクもあります。マウスピースを外した際は必ずケースに入れるなど、扱いに注意する必要があります。
また、すべての症例に対応できるわけではありません。重度の骨格性のズレや大きな顎変形などの場合は、ワイヤー矯正や外科的処置が必要になることがあります。適応可否は専門医の診断が不可欠です.
コスト面も注意点。自由診療(保険対象外)であることが多く、治療費はクリニックによって大きく変動します。追加の調整や素材の追加が必要になると費用が上がることもあります。
さらに、治療が思うように進まない場合や装着期間が守れなかった場合、予定より長くかかることは十分にあり得ます。継続的なフォローや患者側の協力が大切です。
よくある質問に答える
Q:いつ始めるのがベスト?
A:一般的には6〜10歳前後、乳歯と永久歯が混ざっている混合歯列期がスタート適齢期とされています。顎の成長をうまく使えるこの時期に始めることで、将来の矯正の負担を減らせるケースがあります。
Q:治療期間はどれくらい?
A:目安は1年〜1年半。ただし、歯の動きや成長、装着時間の徹底度合いによって前後します。予定どおり進むかどうかは、こまめな通院と装着管理次第です。
Q:痛みはある?
A:一般的にはワイヤー矯正に比べて痛みは軽めと言われています。マウスピースで動かす力が弱めに設定されることも多く、口内を傷つけるリスクも低い素材が使われています。
Q:矯正をやめたら戻る?
A:すべての矯正治療と同じく、リテーナー(保定装置)を使って後戻りを防ぐケアが必要です。矯正後の維持期間や方法は、担当の矯正医と相談して決めていくことになります。
親御さんに伝えたいこと
子どもの矯正を始めるというのは、親御さんにとっても不安が付きものです。見た目、費用、痛み、将来性など、考えなければならないことはたくさんあります。だからこそ、インビザライン・ファーストのように、目立ちにくく、取り外しも可能で、顎の成長を利用できる治療法が選択肢に入るのは大きなメリットです。
ただし、治療を成功させるには「子ども本人の意欲」「親御さんのサポート」「装着時間を守る習慣化」が欠かせません。マウスピースをきちんとつける・忘れずに来院する・ケアを怠らない、これらの要素をクリアできる環境で始めることが、満足度の高い結果を出す秘訣です。
インビザライン・ファーストは、子どもの成長期を味方につけた、目立ちにくくストレスの少ない矯正治療です。従来の矯正装置に抵抗感があって踏み切れなかった方にも希望を与えてくれる選択肢になるでしょう。
