2026年1月02日

――歯科医が本音で語る、後悔しない治療の考え方
はじめに|歯医者は「分けて通う」のが正解なのでしょうか
歯科治療を考えるとき、多くの方がこう考えます。
矯正は矯正専門のクリニック、
セラミックやホワイトニングは審美歯科、
虫歯や歯周病は近所の保険診療の歯医者。
一見すると、とても合理的な選択に見えます。
それぞれの分野に「専門」があり、
専門家に任せた方が安心できそうだからです。
しかし実際の臨床では、
この「分けて通う」という選択が、後悔につながってしまうケースを数多く見てきました。
この記事では、
なぜ矯正・審美・保険治療を一つの医院で行うことに意味があるのか、
そして、どんな人にとってそれが本当にメリットになるのかを、
歯科医の立場からできるだけ正直にお話しします。
そもそも歯科治療は「分野別」に分けられるものなのか
歯科医療は、
・矯正
・審美
・保険治療
という言葉で分類されがちです。
ただし、これは制度上・説明上の区分であって、
お口の中が実際に分野別に分かれているわけではありません。
一本の歯は、
噛み合わせに影響し、
見た目に影響し、
虫歯や歯周病のリスクにも影響します。
つまり本来、歯科治療は
すべてが連動している医療なのです。
分けて通うことで起きやすい「3つのズレ」
1.治療のゴールが共有されない
矯正歯科では歯並びを整えることが目的になります。
審美歯科では見た目を美しくすることが目的です。
保険診療では、今ある問題を治すことが主な目的になります。
それぞれは正しいのですが、
「最終的にどんな口元を目指すのか」
というゴールが共有されないまま進むことが少なくありません。
結果として、
矯正後に被せ物のやり直しが必要になったり、
審美治療をした歯が噛み合わせに合わなくなったりすることがあります。
2.治療の順番が最適でなくなる
歯科治療では、
**「何を先にやるか」**が非常に重要です。
本来は、
・歯周病のコントロール
・噛み合わせの設計
・歯並びの調整
・見た目の仕上げ
という流れを、全体を見ながら決めていきます。
しかし医院が分かれていると、
それぞれの都合で治療が進み、
結果的に遠回りになることがあります。
3.誰も「全責任」を持たない状態になる
これは意外と大きな問題です。
医院が分かれている場合、
何かトラブルが起きたときに
「それは前の治療の影響ですね」
「うちはここまでが担当です」
という状況になりがちです。
患者さんからすると、
誰に相談すればいいのかわからない状態になります。
「一つの医院でやる」とは、どういう意味なのか
ここで誤解してほしくないのは、
「全部を一人の歯科医が完璧にやる」という意味ではありません。
本質はそこではなく、
治療の設計と責任が一貫しているかどうかです。
一つの医院で行う場合、
・最初に全体像を整理する
・ゴールを明確にする
・治療の順番を設計する
・途中で軌道修正を行う
これらを一つの方針で進めることができます。
矯正・審美・保険治療がつながる具体例
矯正だけでは解決しないケース
歯並びを整えたのに、
歯の形や大きさの問題で見た目が改善しないことがあります。
この場合、
最初から審美治療を視野に入れて矯正を設計していれば、
矯正の方法やゴール自体が変わることもあります。
審美治療だけでは長持ちしないケース
見た目を優先して被せ物を入れた結果、
噛み合わせが合わず、
数年で欠けたり外れたりするケースもあります。
これは、
噛み合わせや歯並びの視点が抜けていることが原因です。
保険治療だけでは将来に不安が残るケース
今ある虫歯だけを治すと、
見た目や噛み合わせの問題が先送りになることがあります。
結果として、
同じ場所を何度も治療することになり、
歯の寿命を縮めてしまうこともあります。
それでも「分けた方がいい」人はいる
ここであえて反対意見も書きます。
すべての人にとって、
一つの医院で完結することが最善とは限りません。
例えば、
・大学病院レベルの専門治療が必要な場合
・非常に特殊な外科処置が必要な場合
・明確に一分野だけの治療を希望している場合
こうしたケースでは、
専門医院に紹介する方が良いこともあります。
大切なのは、
無理に囲い込まないことです。
重要なのは「設計責任」という考え方
矯正・審美・保険治療を一つの医院でやる意味は、
「全部ここでやります」という宣言ではありません。
最初から最後まで、治療の設計に責任を持つこと。
これが本質です。
必要であれば専門医と連携し、
それでもゴール管理は一貫して行う。
この体制があるかどうかで、治療の満足度は大きく変わります。
渋谷おおの歯科・矯正歯科の考え方
当院では、
矯正・審美・保険治療を
「別物」としてではなく、
一つの流れとして捉えることを大切にしています。
初診時には、
今の問題だけでなく、
将来起こり得るリスクや選択肢も含めて整理します。
どの治療を選ぶかは、
患者さんご自身が決めるものです。
私たちは、その判断材料をできるだけ正確にお伝えする役割だと考えています。
歯科治療で後悔しないために
歯科治療は、
一度きりで終わるものではありません。
何年、何十年と付き合っていく医療です。
だからこそ、
「どこで、何を、どう進めるのか」
を最初に考えることがとても重要です。
もし歯医者選びで迷ったら、
「この医院は、治療全体の設計をしてくれるだろうか」
という視点で考えてみてください。
まとめ
矯正・審美・保険治療を一つの医院で行う意味は、
便利だからでも、全部できるからでもありません。
治療が分断されず、
一つのゴールに向かって進められること。
それが、
やり直しの少ない、後悔しにくい歯科治療につながります。
FAQ
矯正と審美治療は、必ず同じ歯科医院で行うべきですか?
必ずしも同じ医院で行わなければならないわけではありません。ただし、治療の順番やゴールを誰が設計しているかは非常に重要です。医院が分かれていても、全体を把握し、責任を持って調整してくれる歯科医がいるかどうかがポイントになります。
保険治療と自費治療を同じ歯医者で受けるメリットは何ですか?
保険治療と自費治療を同じ医院で行うことで、短期的な治療だけでなく、将来的な見た目や噛み合わせまで含めた一貫した治療計画を立てやすくなります。結果として、やり直しや追加治療のリスクを減らせることがあります。
専門医院の方が技術的に優れているのではありませんか?
専門性が高い医院には、特定分野における強みがあります。ただし、歯科治療では複数分野が関係することが多いため、専門性と全体設計のバランスが重要です。必要に応じて専門医と連携できる体制があるかどうかが判断材料になります。
